2010-02-17 (Wed)
「Dr. Yoshi アメリカ開業医はつらいよ!」
 二木 良夫医師著(克誠堂出版)

この本は米国に臨床留学し開業までした医師の手記。
大変興味深い。
映画「Sicko」に描かれているアメリカ医療のさまざまな問題点は本当のことであるということがよくわかる。

やたらな医療訴訟とそのための医師側の医療訴訟保険の高騰(保険料が1000万円になる科も)のため、フロリダから専門医が逃げ出すなど。
著者が日本に帰るといかに日本の医療が安価であるか、実感したという。

著者の開業医仲間でベテランの小児神経医Dr. Vは頭痛が主訴の患者すべてに対して、CTもしくはMRIを撮っていた。

米国での研修中は、問診と理学所見で偏頭痛の可能性が高いと思われるのであれば、CTは医療費の浪費であり、撮るべきではないと教わり、
もちろん教科書にもそのように書いてある。

著者が質問するとDr. Vはにやりとして、おもしろいものを見せてあげるよと言い、一枚のコピーを見せてくれた。

1991年6月付けの手紙のコピーであった。

この患者は24歳女性。11年間偏頭痛様の頭痛があり、偏頭痛に対する薬物治療にもよく反応し、神経的所見はすべて正常であり、偏頭痛の診断で、頭部CTは一度も撮られたことがなかった。

この患者は最終的に非腫瘍性の中脳水道狭窄が発見され、水道狭窄による脳圧亢進が直接の死因と考えられ問題となり、医療訴訟保険の最高額を超える巨額の賠償金が発生し、この医師は破産し、その助けを神経科医学会員に訴えているという手紙であった。

教科書的に適切に対応していても結果が悪いごく稀な例ではこのような悲劇が起こりうる。
Dr. Vはすべての頭痛患者のCTを撮らざるを得ないと言っていたという。

「小児神経開業において、頭痛の患者の占める割合は大きく、何十年も開業しているとかなりの数になる。医学においては、すべての患者が教科書的な症状で来るわけではない。その中には、非典型的、非教科書的な患者も必ずいる。それらの一人でも見逃したら、その時点で医者のキャリアは終わる。
教科書的スタンダードを学ぶ研修医と、何でもありの実践である開業との違いを知らされた経験であった。」

デリケートな問題ですが、教科書的な法則と「現場・現実」との差については細心の注意が必要なのだと再認識しました。




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